大阪地方裁判所 平成11年(ワ)8174号 判決 2000年5月12日
原告
炭本和良
被告
濱坂美紀子
主文
一 被告は、原告に対し、金四二四万一一七九円及びこれに対する平成九年一一月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを一〇分し、その五を原告の負担とし、その五を被告の負担とする。
4 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告は、原告に対し、金九九九万四二〇六円及びこれに対する平成九年一一月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
一 訴訟の対象
自賠法三条、民法七〇九条(交通事故、人身損害)
二 争いのない事実及び証拠上明らかに認められる事実
(一) 交通事故の発生(甲一)
<1> 平成九年一一月四日(火曜日)午後五時一五分ころ(晴れ)
<2> 大阪府茨木市野々宮二丁目二〇番二〇号先市道
<3> 被告は、普通乗用自動車(大阪五〇つ四七九一)(以下、被告車両という。)を運転中
<4> 原告(昭和二六年三月一七日生まれ、当時四六歳)は原動機付き自転車(大・茨木市つ五六四五) (以下、原告車両という。)を運転中
<5> 原告車両が右折しようとしたところ、対向直進してきた被告車両と側面衝突した。
(二) 責任(弁論の全趣旨)
被告は、被告車両を所有している。したがって、自賠法三条に基づき、損害賠償義務を負う。
(三) 傷害(甲二)
原告は、本件事故により、頸椎捻挫、腰椎捻挫、骨盤骨折などの傷害を負った。
(四) 治療(甲二、四、五)
原告は、次のとおり入通院し、平成一一年四月七日、症状固定した。
<1> 茨木医誠会病院に、平成九年一一月四日から平成一〇年二月二二日まで一一一日間入院した。
<2> 同病院に、平成一〇年二月二三日から平成一〇年五月一八日まで(実日数五〇日)通院した。
<3> 摂津医誠会病院に、平成一〇年五月二〇日から平成一一年四月七日まで(実日数九一日)通院した。
(五) 後遺障害(甲一一)
自動車保険料率算定会は、原告の後遺障害が後遺障害別等級表一二級五号に該当する旨の認定をした。
三 原告の主張
原告主張の損害は、別紙一のとおりである。
四 争点と被告の主張
(一) 争点
過失相殺
(二) 被告の主張
被告車両が走行車線を直進していたところ、原告車両が対向車線から中央分離帯を通って右折のため飛び出してきたため接触した。したがって、被告に過失がないか、あったとしてもわずかである。
第三過失相殺に対する判断
一 証拠(乙一、二、原告と被告の供述)によれば、次の事実を認めることができる。
(一) 本件事故現場は、東に向かって若干上りになっていて、最高速度は時速四〇kmに規制されており、信号機は設置されていない。被告車両からの見通しは、前方はよいが、中央分離帯があって右方は悪い。
事故現場の概況は、別紙図面のとおりである。
(二) 被告車両(幅一・三九m)の損傷状況は、前部バンパー右側凹損擦過、ボンネット右側擦過、右前フェンダー凹損である。原告車両の損傷状況は、前かご左側曲損、前輪左側ステ曲損、左前指示灯ガラス割である。
(三) 被告は、本件事故直後、警察官に対し、次のとおり指示説明をした。(原告は、救急搬送されたため立ち会っていない。)
東行き車線を走行していたとき(<1>)、左前方の大池ポンプ場の出入り口に東行き車線に進入しようとしている車両がいる(A)のを見つけたので、その車両を見ながら進行した。
ポンプ場の出入り口付近にさしかかったとき(<2>)、中央分離帯が途切れたあたりに原告車両がいる(ア)のを見つけ、危険を感じ、ブレーキをかけたが、同時に衝突した。
被告車両はさらに進んで停止し(<3>)、原告と原告車両が衝突地点付近に転倒した(それぞれウとイ)。
なお、衝突地点から南東方向に擦過痕が残っていた。
(距離関係は、別紙図面記載のとおりである。)
(四) 被告は、本件尋問期日において、次の供述をする。
事故の状況は、およそ警察官に対し指示説明したとおりである。
前方を見ていたが、原告車両が一時停止したところは見ていないし、飛び出してきた感じがする。しかし、気付いたときに衝突したというのが正確である。飛び出してきたと感じたのは、事故直後に原告から大丈夫だといわれ、原告に責任があるように思ったからである。
(五) 原告は、本件尋問期日において、次の供述をする。
原告は、新聞配達をしている途中、大池ポンプ場に新聞を届けるため、西行き車線を西に向かって走行していた。
そして、事故現場の中央分離帯の途切れたところから右折をして、大池ポンプ場の出入り口付近にあるポストに新聞を入れるため、中央分離帯の途切れたところで、右折を始めた。
そうしたところ、出入り口付近に車両が停車していたので、そこに進入できず、また、対向車線(東行き車線)を見たら、前方から原告車両が走行してきたので、東行き車線にわずかに進入して、いったん停止をした。
ところが、被告車両がわずかだが南に寄ってくるような感じで接近をしてきて、避ける間もなく被告車両の右前部と原告車両の前部が衝突した。
二 これらの事実をもとに検討する。
被告は、原告車両が飛び出してきたと主張する。
しかし、被告は、警察官に対し指示説明をしたとおり、また、本件で供述したとおり、衝突するまで原告車両に気付いていないから、被告の供述から原告車両が飛び出してきたと認めることは困難である。
また、被告車両と原告車両の損傷状況を検討しても、原告車両が飛び出してきたのか、いったん停止していたのかを確定することは困難である。
さらに、事故現場の状況を検討しても、原告が対向車両の有無を確認しないで対向車線に飛び出してくるとは考え難く、やはり飛び出したと認めることは難しい。
原告の供述も、それ自体、特に不自然や不合理なところがなく、これを直ちに採用することができないとはいえない。
これらの事情を総合して考えると、原告車両が飛び出してきたと認めるに足りないというべきである。
三 もっとも、前記認定によれば、原告は、右折のため、わずかではあるが対向車線に進入している。そうであれば、対向車両の動静に十分注意すべきであった。そして、それを怠った過失は小さくはない。
また、被告は、衝突するまで原告車両に気付いていないから、もっと前をよく見て走行すべきであった。
これらの過失を比べると、どちらの責任も同程度であるというべきであり、原告と被告の過失割合を五〇対五〇とすることが相当である。
第四損害に対する判断
一 損害に対する判断は、以下に付け加えるほか、別紙二に認定のとおりである。
入院付添費については、相当因果関係がある損害とは認められない。
二 結論
したがって、原告の損害は、別紙二のとおりである。
(裁判官 齋藤清文)
11―8174 別紙1 原告主張の損害
1 治療費(甲3) 3万1500円
2 入院付添費(甲2) 61万0500円
3 入院雑費(甲2) 14万4300円
4 入通院慰謝料 296万0000円
5 休業損害 220万4790円
(1) 年収は、合計318万0823円(甲6ないし8)
(2) 休業期間は、平成10年7月14日までの253日
6 後遺障害慰謝料 240万0000円
7 逸失利益 628万0725円
(1) 年収318万0823円
(2) 労働能力喪失率14%(12級)
(3) 期間(ホフマン係数14.104)
小計 1463万1815円
弁護士費用 146万3000円
合計 1609万4815円
既払金(自賠責保険金) 224万0000円
既払金控除後 1385万4815円
請求額(一部請求) 999万4206円
11―8174 別紙2 裁判所認定の損害
1 治療費(甲3) 3万1500円
2 入院付添費 0円
3 入院雑費(甲2) 14万4300円
4 入通院慰謝料 200万0000円
5 休業損害 220万4790円
(1) 年収は、合計318万0823円(甲6ないし8)
(2) 休業期間は、平成10年7月14日までの253日
6 後遺障害慰謝料 240万0000円
7 逸失利益 538万1768円
(1) 年収318万0823円
(2) 労働能力喪失率14%(12級)
(3) 期間19年(ライプニッツ係数12.0853)
小計 1216万2358円
過失相殺後(被告50%) 608万1179円
既払金(自賠責保険金) 224万0000円
既払金控除後 384万1179円
弁護士費用 40万0000円
合計 424万1179円
交通事故現場見取図